(少年事件)18歳特定少年の強盗致傷事件で検察官送致や少年院送致を回避した事例
事案の概要
非行当時18歳の特定少年(以下、単に「少年」という。)が、複数共犯者とともに強盗致傷を行ったことで逮捕された事案である。被害者は全治約半年の傷害を負った。
当事務所の弁護士が国選弁護人として捜査段階から活動し、最終的に保護観察処分を獲得した。
行った活動
本件の少年は非行時18歳の特定少年であり、かつ、非行事実も強盗致傷事件であるから、原則として検察官送致決定をしなければならない事件に該当する(少年法62条2項2号)。
検察官送致がされると、地方裁判所において刑事裁判を受けることになる。
但し、例外として、「犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境、その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるとき」には、検察官送致決定をせずに、少年院送致や保護観察といった保護処分を選択することもできる(少年法62条2項柱書但書)。
条文上、保護処分は例外として規定されているので、保護処分を目標とする場合には、上記例外事情を家庭裁判所に説明していかなければならない。その反面、仮に検察官送致とされた場合には刑事裁判(裁判員裁判)を受けることになるため、捜査段階から慎重な対応が求められた。
捜査段階では、弁護士は少年に黙秘を指示した上で、少年から慎重に事実関係を聴取し、丁寧に事案分析を行った。
また、少年が事実を一部認めていたことから、内省を深めさせるための対話も繰り返した。
弁護士としては、強盗致傷罪が成立することは確かであるが、少年自身が行った暴行の内容等関与の程度からすれば、少年の関与は従属的と見る余地があり、刑事処分を課すまでの必要はないと考えた。
さらに、少年が非行に及んだ背景事情や性格、内省状況等に鑑みれば、社会内処遇、すなわち保護観察処分にもなじむと考えた。
家庭裁判所送致後、弁護士は少年と対話を繰り返して内省を深めさせたほか、被害者との示談交渉も行った。
また、家庭裁判所調査官や裁判官に対して、非行事実の重さ(結果の重大性や行為態様等)を共犯者全体として見るのではなく、少年ごとに判断してほしい旨伝えるとともに、少年の関与の度合いが従属的であることを丁寧に説明した。
加えて、少年が家庭裁判所送致後も非行について振り返り続けていることや被害者の心情についても理解を深めていること等も説明し、社会内処遇に適することも主張した。
結果
1回目の審判で、裁判官は少年ごと個別具体的に行為態様や結果に与えた影響を分析する方針をとり、結果として、少年を試験観察に付した。
その後、試験観察中の少年の頑張りも評価されて、少年には最終的に保護観察処分決定がされた。
弁護士からひと言
本件の被害結果は重大であり、担当した弁護士としては単に「軽い処分を求めればよい」と考えているわけではない。
新たな被害者を増やさないためにも、また、少年の未来のためにも、少年の再非行防止に貢献していきたいと考えているし、そのための活動をしていきたい。
少年法の対象となる「少年」は、精神的に未熟で、良くも悪くも外部の環境に影響を受けやすい。
仮に非行に及んだとしても、その背景には家庭や学校などの環境や生まれ持った資質など、少年自身ではどうすることもできない事柄が要因となっていることが多い。
そのため、各要因に応じて外部から適切な支援、教育を受けることで、少年が短期間で更生することも珍しくない。
本件の結果が重大で、行為態様も悪質であったことからすれば、検察官送致決定も十分に考えられたところであるが、少年が被害者心情への理解を深めたことや試験観察中の少年の様子等を踏まえると、保護観察処分がされてよかったと改めて感じている。
今後も、各少年に向き合い、少年にとっての最善を追求していきたい。
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