(少年事件)特殊詐欺事件で少年院送致を回避し保護観察処分を獲得した事例
事案の概要
当時中学生の少年が、特殊詐欺の受け子として複数の被害者から相当高額な金額を受領したことで逮捕され、その後家庭裁判所に送致されて観護措置がとられた。
当事務所の弁護士が国選付添人に選任され、家庭裁判所送致後から活動を開始した。
行った活動
本件は、被害額が大きいことから本来的に少年院送致となる可能性が高い事案だったが、内省を深めるなど要保護性を低下させることで少年院送致を回避できる可能性もある事案だと考えた。
しかし、少年は捜査段階で周囲の大人から少年院送致見込みと説明されたため、初回面会時には内省を深める意欲をなくしてしまっており、そのままでは少年院送致となることが見込まれた。
そこで、弁護士としては、鑑別措置期間中に内省を深めてもらうために、複数回面会に赴き、少年に理解を示しながら丁寧に話を聞くことを心がけた。
また、少年が話した内容についても質問を繰り返し、少年に深く具体的に考えてもらうことを心掛けた。
その結果、少年は、弁護士に対して詐欺に加担するまでの経緯や人間関係の悩みなどを打ち明け、審判前には、被害者に与えた影響や今後再非行に及ばないための対策についても少年自身で具体的に考えられるようになった。
弁護士は、少年から聞き出した情報をもとに再非行に及ばないための環境の調整にも努めた。
弁護士から家庭裁判所に対して上記活動結果とともに少年には少年院収容の必要がないことの説明を行った。
結果
1回目の審判では、試験観察処分という一定期間のチャンスが与えられた。
試験観察中の少年の頑張りも評価されて、最終的に保護観察処分を得ることができた。
弁護士からひと言
今回の事例では、中学生が特殊詐欺に関与していることに大変驚いた。特殊詐欺では首謀者は表に出てこずに、未熟な少年が受け子や出し子として利用されることが多い。
少年が関わったのは金銭を受領する場面だけであるが、犯罪に関わってしまった以上、少年が自らの行為や被害結果について考え、被害者の方に対して誠意を尽くすことは当然である。
しかし、少年が特殊詐欺に加担した要因は少年だけにあるとは限らない。
少年事件に携わる弁護士としては、なぜ少年が特殊詐欺に加担することになってしまったのかを少年を取り巻く環境など背景事情にも目を向けて分析し、再非行防止に貢献したい。
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