(相続)親の家計簿から生前贈与や寄与分を計算し審判で認められた事例

事案の内容と依頼の経緯

 兄弟同士の遺産分割の事例。

 長男は若い頃から借金を繰り返し、兄弟の父母は生前から長男の借金の肩代わりをしていた。また、長男は生活費もままならない状況だったので、兄弟の母親は、毎月のように長男に小遣いを与えていた。

 このような経緯があったことから、父母は、遺産は次男に多く相続させたいと考え、次男もそのつもりだったが、父母は遺言書を残していなかった。

 次男は遺産を多く取得したいと交渉したが、長男は、父母の遺言書がないのをいいことに、遺産をきっちり2分の1ずつ分けることを主張して譲らなかった。

 交渉が難航しているとのことで、次男(弟)が当事務所に依頼。長男(兄)とは遺産分割調停を行うことになった。

当事務所の対応

 長男が父母から援助を受けてきたことが調停で「特別受益」と認定されれば、長男の相続分を減らすことができるので、その金額の特定と裏付け資料の収集を行った。併せて「寄与分」として主張できるものはないかを確認した。

 調査の結果、母親が何十年にもわたって詳細な家計簿をつけていたので、弁護士が、借金を肩代わりした金額、与えた小遣いの金額をピックアップし、全てのデータをエクセル表にまとめた。何十冊にもわたる家計簿から、該当ページをコピーし、エクセル表とともに裁判所に提出した。

 また、長男の生計が父母からの援助で成り立っていたことを説明し、「生計の資本」として「特別受益」の要件を満たすと主張した。

 次男の寄与分については、次男が長年、父母と同居し、家賃や水道光熱費を負担してきたことを、家計簿や銀行の通帳などから立証した。

結果

 一つ一つの援助額は少額であったが、援助の総額が1000万円を超え、裁判所も、父母の長男に対する援助は特別受益であると認めた。寄与分についても一定程度の額が認められた。

弁護士からの一言

 親から子に与えていた金額が少額の小遣い程度であれば、「特別受益」として認められないのが原則です。また、小遣いを与えていたことの立証も通常は困難です。「寄与分」についても、同居していた程度では認められないことがほとんどです。

 しかし、本件では、上記のとおり詳細な資料を作成し、主張・立証したことで、特別受益も寄与分も裁判所に認めてもらうことができました。

 何十冊にもわたる家計簿をコピーし、必要なデータをピックアップしてまとめるのは相当な手間がかかりましたが、諦めずに地道な作業を行ったことが奏功しました。

 親の経済的援助に長年頼ってきた長男と、そうではない次男が、遺産分割において同等に扱われるのは不公平です。裁判所にこの点が認められて本当に良かったです。

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