特別受益の弁護士相談

 相続人間の公平を図るための制度として、特別受益という制度があります民法903条)。簡単な言葉で説明しますと、特別受益は、もらいすぎの人の相続分を少なくすることです。 

特別受益とは

 相続人の中に、被相続人から生前に特別の利益を受けていた者がいる場合、その者が、法定相続分どおりの遺産を受け取ると、もらいすぎで不公平になってしまいます。

 特別受益とは、この不公平を是正するための制度です。特別受益の典型例は生前贈与です。 

生前贈与とは?

 生前贈与とは、広い意味では被相続人が死ぬ前に行なった贈与のことですが、特別受益で問題となるものは、相続人に対して行なわれた贈与のことです。

特別受益の主な内容

 過去の審判例で特別受益となった内容をご紹介します。ただし、これらの金額が少ない場合には、特別受益と認められない場合もあります。

  • ・生前贈与
  • ・事業資金提供
  • ・学費援助
  • ・住宅購入時の支援
  • ・借金の肩代わり
  • ・多額の保険金の受取人とする

特別受益の例

例えば、父親が亡くなり、相続人が長男と次男(兄と弟)の2人だけだった場合

  • ・兄が結婚する際に、父親から結婚支度金として多額のお金を生前贈与してもらった。
  • ・兄が養子縁組する際に、父が多額の持参金や支度金を用意した。
  • ・兄が不動産を買う時に、父親から資金を援助してもらった。
  • ・兄が居住するための不動産を父から生前贈与された。
  • ・兄が父から借地権を贈与され、その土地上に建物を建てて住んでいる。
  • ・兄が事業を始める際に、父親から開業資金を援助してもらった。
  • ・兄が私大医学部に進学し、多額の入学金を父に出してもらった。
  • ・兄が海外留学する際に、学費や生活費を全部父親に出してもらった。
  • ・兄がギャンブルを繰り返し、多額の借金を父親に肩代わりしてもらった。
  • ・兄の借金の保証人になっていた父が、その借金を全額返済したが、父は兄に返還請求しなかった(父は兄に対する求償債権を免除した)。
  • ・兄が契約した生命保険の高額な保険料を父が全額支払った。
  • ・父は兄の妻に不動産を贈与したが、真実は兄に対する贈与で、名義を妻としただけだった。

 このような場合に、兄が受けた利益の分だけ兄の相続分を少なくするのが特別受益の制度です。 

受益に当たらない生前贈与とは?

 生前贈与であっても特別受益に当たらないものがあります。その例は、次のようなものです。

  • ・少額のお小遣いや生活費
  • ・常識的な範囲の香典やご祝儀(結婚資金は特別受益になる場合があります)
  • ・親が出した学費でも、兄弟間で金額に大きな差がない場合

 特別受益の対象となるかどうかは、たくさんの審判例があります。
 例えば、入学祝いや結婚のご祝儀など、儀礼の範囲と言える程度の金額であれば特別受益にはあたりません。どの程度の金額なら特別受益にあたるかについては、その家の資産状況によりけりです。

 また、親子間には扶養義務がありますので、単に生活費を援助してもらっていただけでは特別受益にはあたりませんが、過大な援助を受けていたなら、特別受益と認められる可能性はあります。
 親からの生活費援助が特別受益にあたるかについては、こちらをご覧ください。

 特別受益の計算方法についてはこちらをご覧ください。

生前贈与を返せと言われたら?

 被相続人から生前贈与を受けていた者が、他の相続人から「生前贈与されたものを返せ」と言われたらどうしたらいいのでしょうか。

 物理的に返すかどうかはさておき、生前贈与が特別受益に当たるのであれば、その金額を遺産に戻して計算しなければなりません。

特別受益者が先に死亡した場合

 被相続人から生前に生計の資本としての贈与を受けていた特別受益者が、被相続人よりも先に死亡した場合、特別受益者の遺産を受け取る相続人(代襲相続人)が「被相続人から特別受益を受け取った」として扱われます。

 したがって、特別受益の主張がされた場合、代襲相続人は、特別受益を計算上遺産に戻したうえで自己の相続分を計算しなければならず、代襲相続人の取り分は減ることになります。

 例えば、被相続人に子どもと孫がいて、被相続人から子どもに対して特別受益に当たる生前贈与があったとします。

 そして、子どもが被相続人よりも先に死亡した場合、被相続人の孫は代襲相続人となるので、「被相続人から特別受益を受け取った」として扱われます。

 その後、被相続人が死亡した場合は、孫が被相続人から特別受益を受取ったものとして自己の相続分を計算します。

相続における特別受益のトラブルは弁護士にご相談を

 特別受益の評価や計算は、複雑な場合もあります。相手に納得してもらうのにも苦労する場合があります。そういった場合は、弁護士にご相談ください。

 当弁護士事務所では、特別受益などの遺産相続のご相談を、依頼者に寄り添って丁寧に対応いたします。まずは、お電話もしくはメールフォームにてご連絡ください。


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