親からの生活費援助は特別受益にあたるか?

 特別受益とは、相続人同士の公平を図るための制度で、被相続人から生前に援助を受けていた相続人は、すでに遺産を先にもらっている扱いとなる制度です。

 親から長期間にわたって生活費の援助を受けていた場合、この金額が特別受益に当たるのかについて、解説します。

例:母親が死亡した。相続人は長男と次男の2人。

・生前、母親が別居している次男一家に対し、10年にわたって毎月生活費を援助していた。

 上記は生活費に関するよくある特別受益の例で、母親から長期間にわたって生活費の援助を受けていた場合、この金額が特別受益にあたるのかというものです。

 同居の場合も同様の問題が起こりえます。 

(1)特別受益の考え方

 何人かいる相続人のうち、一部の相続人だけが被相続人から生前に特別の利益を受けていた場合、その相続人が他の相続人と同じ額の遺産を受けるのは不公平なように思えます。

 そこで、特別な利益を受けた相続人の相続分を減らすのが、特別受益の考え方です。

 受けた利益のすべてが「特別受益」と評価されるのではなく、あくまでも「相続分の前渡し」と評価できるような特別な利益が「特別受益」にあたります。

(2)生活費の援助は特別受益にあたるのか?

 では、本件のように、母親が生活費を援助していた場合は特別受益と評価されるでしょうか?

 親子間には扶養義務があるので、扶養的な援助の範囲内であれば、特別受益にはあたりません。

 ただし、援助の頻度や総額が多いときは、生活費の援助であっても、「特別受益」と評価される場合もあるでしょう。

(3)毎月いくらの生活費なら特別受益にあたるのか?

 なお、1か月あたり10万円を超える送金を「特別受益」と認めた判例があります(東京家庭裁判所 平成21年1月30日付審判)。

 ただし、この判例は、毎月の送金のうち、「少額のものを扶養的金銭援助にとどまる」として除外した趣旨にすぎず、「1か月10万円を超える贈与はすべて特別受益にあたる」という一般的な規範を示したものではないといわれています。

 ですので、この判例を根拠として「もらっていた生活費は10万円以内だから特別受益にあたらない」といった主張や「10万円を超えるから特別受益にあたる」といった主張をしても、裁判所が認めてくれるとは限らないことに注意する必要があるでしょう。

生活費が特別受益に該当するか迷ったら弁護士に相談を

 生活費が特別受益に該当するかどうかは、さまざまな事情から考慮されます。

 相続のときに、亡くなった方から生活費を多くもらっていたと感じることがあったら、まずは相続に強い弁護士にご相談されることをお勧めします。

 横浜で特別受益に関するご相談なら、上大岡法律事務所にお任せください。


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