後遺症の損害賠償

平成25年2月14日号掲載
平成29年6月27日追記

Q
 私は交通事故で怪我をし、通院していましたが、これ以上は治らないと医者に言われ、後遺症は14級と認定されました。私は47歳の専業主婦ですが、後遺障害については、どのような損害賠償請求ができますか。
 
A
 この場合に賠償請求できる項目は2つあります。
 
 1つは「後遺症慰謝料」です。後遺症慰謝料とは、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する賠償です。治療中に生じる精神的苦痛に対しても賠償請求をすることができますが(傷害慰謝料)、これとは別に後遺症についても請求することができます。金額については、後遺障害の等級(1級から14級)により異なり、裁判基準(弁護士会と裁判所が協議して作成した基準)では、14級の場合110万円です。
 
 もう1つは「逸失利益」です。逸失利益とは、後遺障害によって事故前には100%あった労働能力が低下して、事故前より収入が減る場合、その将来の減収分を請求するものです。
 逸失利益の計算方法は、「事故前年度の年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」とされています。逸失利益は上に述べたように事故当時の年収を基礎に計算します。
 
 専業主婦の場合、収入がないから逸失利益もゼロだと考えるのは誤りです。後遺障害により家事労働ができなくなることも当然にあります。
 
 そこで、家事労働を金銭的に評価し、相当額の逸失利益を請求することになります。具体的には、全国女子労働者の平均賃金と同額として算出します。平均賃金は厚生労働省が毎年調査している賃金構造基本統計調査結果(賃金センサス)を元にします。
 
 また、労働能力喪失率(どの程度労働能力が低下したか)は後遺障害等級によります。後遺障害が14級の場合は、労働能力が5%減少したものとして逸失利益を計算します。  
 
 労働能力喪失期間(就労可能期間)は、通常、症状固定時(医学上一般に承認されている治療方法をもってしても、これ以上その効果が期待できない状態)から67歳までとされています。症状固定時が47歳の場合、労働能力喪失期間は20年です。  
 
 仮に、該当する年度の全国女子労働者の平均賃金が年収300万円だったとすると、300万円×5%=15万円が1年分の減収という計算になります。これを20年分請求できるとすると、15万円×20年=300万円が逸失利益になります。
 しかし、金銭は運用により利益を生むものなので、本来20年をかけて300万円を取得できるはずのところ、現在一括で300万円を取得するということになると、その運用利益を不当に取得することになってしまいます。  
 
 そこで、その不都合を修正するのが、ライプニッツ係数です。20年に対応するライプニッツ係数は12.4622とされています。  
 
 結局、逸失利益として請求できるのは、300万円×5%×12.4622=187万円になります。
 
 
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