弁護士会での事務職員研修レジュメ~弁護士の仕事


弁護士の石井です。

 私は昔から弁護士会で、法律事務所の事務職員向けの研修に関わってきていました。
 10年くらい前に、神奈川県弁護士会(当時は横浜弁護士会)で私が講師を務めた事務職員向け研修のレジュメをアップします。
 一般の方も、弁護士業界のしくみがある程度理解できる内容となっているのではないかと思います。レジュメ中の数値は、最近のデータに置き換えています。

弁護士の仕事について

1 法曹とは

・法曹≠法律家(司法書士、行政書士等も含む)
・裁判官・検察官・弁護士のこと(法廷で活動をする法律家)
・司法試験に合格し、1年間(以前は2年)の司法修習を終え、それぞれの道に進む。
・司法修習は司法研修所(平成6年までは湯島、その後は和光市)、実務修習は全国の県庁所在地。「二回試験」に合格して終了。
・研修所の「期」は、実務でよく使われる(平成27年に司法修習を終えて登録した弁護士は68期修習。今年度の神奈川県弁護士会会長は41期。)ので、事務所の弁護士の「修習期」が何期かは把握しておいた方がよい。

2 弁護士の資格

(1)弁護士の資格の基本

・「二回試験」に合格して司法修習を終了した者
・5年以上法律の定める大学の法律学の教授または助教授の職にあった者など
・国籍要件や年齢要件はない(旧弁護士法にはあった)

(2)弁護士の欠格事由

・禁錮以上の刑に処せられた者(執行猶予付き判決も含む)
・懲戒処分を受けて3年を経過しない者(弁護士の除名、公務員の免職など)
・破産者であって復権を得ない者など

(3)弁護士名簿の登録

・弁護士となるには、入会しようとする弁護士会を経て、日本弁護士連合会(日弁連)に登録(登録換え)の請求をする(強制加入制度)。
・弁護士会は、弁護士会の秩序または信用を害するおそれがあるときなどには、資格審査会の議決に基づいて、日弁連に対する登録(登録換え)の請求の進達を拒絶することができる(弁護士会、弁護士に対する国民の信頼を確保するため)。
・日弁連に備えられた弁護士名簿に登録されると、弁護士としての身分を取得し、同時に入会しようとする弁護士会の会員となる。

(4)弁護士バッジ

・「ひまわりの花」…太陽に向かって明るく力強く咲く「自由と正義」の象徴
・「はかり」…「公平と平等」の象徴
弁護士バッジ  はかりは正義の女神テミスの天秤がモデルとなっている。
 テミスは目隠しをして、右手に剣、左手に天秤を持っているのが有名。目隠しをしているのは、社会的な地位や身分や権力に関係なく、1個人としての言い分を聞いて、正しい判定を下すという意味がある。
 ただ、目隠しをしていない女神像もある(日本の最高裁判所の女神像)。
・弁護士バッジは弁護士1人に1つずつ貸与される。独立行政法人造幣局製であり、純銀製で金メッキが施されている。裏には「日本弁護士連合会員章」の名称と、弁護士登録番号が刻印されている。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA ・バッジをなくすと、紛失の状況報告書を作成提出の上、再発行を受けるが、その場合バッジの裏に「再1」の刻印が打たれる。2回目なら「再2」。悪用されないよう、バッジの管理には責任が伴う。
・裁判官のバッジは「正しいものを照らし出す」といわれる「やた鏡」(天照大神が天の岩戸に隠れた際に祭ったとされる三種の神器の一つ)の中央に「裁」の字を配したデザイン。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA・裁判官の「法服」が黒色であるのは、他の何色にも染まらない、何を混ぜても黒のままであるという点で、裁判官の公平な立場の象徴。
・検察官のバッジは、中心に旭日、周囲に菊の花びらと葉を記し、別名を「秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)」と呼び、秋に降りる霜と夏の強い日差しが「刑罰に対する峻厳な姿勢」を表す。

3 弁護士会、日本弁護士連合会、弁護士会連合会

(1)弁護士会(単位弁護士会)

・全国に52単位会。法人格を有する。
・弁護士法31条1項「弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」
・支部
 神奈川県では川崎、県西、横須賀、相模原。支部会員は約450名。弁護士法には支部に関する定めはない。団体としての実体を有していても、法人格はなく、弁護士会から独立した存在ではない。

(2)日本弁護士連合会(日弁連)

・全国52の弁護士会と個々の弁護士、外国法事務弁護士などで構成される連合組織。法人格を有する。
・弁護士は各地の弁護士会に入会すると同時に日弁連にも登録しなければならない。
・「日弁連は、国家機関からの監督を受けない独自の自治権を有し、弁護士の品位を保持し、弁護士事務の改善進歩を図るため、全ての弁護士及び52弁護士会を指導・連絡・監督する唯一最高の機関です。
 日弁連は、このような自治機関として、弁護士の登録、資格審査、懲戒など弁護士の身分に関する業務はもとより、人権擁護に関する様々な活動、各種法律改正に関する調査研究・意見提出などの活動、消費者被害救済や公害・環境問題への取り組み、刑事手続き改善のための活動や当番弁護士制度、市民に開かれた司法とするための司法改革運動などに積極的に取り組んでいます。」(日弁連ホームページより)

(3)弁護士会連合会

・高裁管内ごとに8連合会(関東,近畿,中部,中国地方,九州,東北,北海道,四国)
・管内各弁護士会が,それぞれ共同して特定の事項を行った方が,単独で行うよりその目的の達成に役立つとの観点から、任意に設立された法人格なき社団。
・関東弁護士会連合会(関弁連)
 関東甲信越の各県と静岡県(東京高等裁判所の管轄区域)にある13の弁護士会(東京,第一東京,第二東京,神奈川県,埼玉,千葉県,茨城県,栃木県,群馬,静岡県,山梨県,長野県及び新潟県)によって構成されている連合体。
 「日弁連及び管内弁護士会と連絡をしながら,(1)司法の改善・発達並びに人権擁護及び社会正義の実現に関する事項,(2)管内弁護士の品位及び地位の向上並びに学術の研究に関する事項などを行う」(関弁連規約より)。

4 弁護士自治

(1)意義

・弁護士の資格審査や弁護士の懲戒を弁護士の団体(日弁連、弁護士会)に任せ、それ以外の弁護士の職務活動や規律についても、裁判所・検察庁または行政官庁の監督に服させないという原則。
・医師は厚生労働省、税理士は財務省が監督。弁護士法上の自治権は諸外国にも類例をほとんど見ないといわれている。

(2)根拠

・弁護士は基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とするが、その過程で国家権力と厳しく対立することがあり、弁護士が裁判所や法務大臣の監督に服していたのでは職業的使命を全うできない。
・現代国家においては法律制度が複雑・高度化しており、適正な裁判を実現するためには弁護士の資質を一定水準以上に保持することが必要である。そのためには弁護士の資格付与と監督権の行使が重要であるが、弁護士が裁判所や法務大臣の監督下に置かれると十分な弁護活動ができなくなり、その結果として適正な裁判が実現できなくなるおそれがある。
・近代民主主義国家においては三権分立主義(立法、行政、司法)が採用されているように、司法においても、裁判所・検察庁・弁護士会が相互に独立の存在であってこそ民主的な司法運営が可能である。

5 弁護士の使命と職務

・弁護士法の規定

第1章 弁護士の使命及び職務
第1条(弁護士の使命)

 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
 2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。

第2条(弁護士の職責の根本基準)

 弁護士は、常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければならない。

第3条(弁護士の職務)

 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
 2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。

・profession…聖職者、医師、弁護士(人に語りたくない事柄を聞く仕事)。公共的使命を有する。→誠実義務、秘密保持義務
・「当事者その他関係人の依頼」→依頼者との法律関係は委任契約関係。当事者とは委任に基づく代理関係にある。「代理人」
・「官公署の委嘱」→原則として弁護士と官公署との間に委任契約関係が成立するが、国選弁護人・破産管財人等は裁判所の決定や命令で委嘱がなされるものの、裁判所と弁護士の間に直接委任関係が成立するわけではない(辞任の自由がない等)。
・弁理士、税理士の身分を取得してこれを称するためには弁理士名簿、税理士名簿への登録が必要。
・司法書士、行政書士、海事代理士の業務も当然行うことができる。しかし、公認会計士の業務は「一般の法律事務」に該当しない。

6 弁護士職務基本規程

(1)「弁護士倫理」から「弁護士職務基本規程」へ(日弁連ホームページより)

 「日本弁護士連合会は、平成16年11月10日臨時総会において、「弁護士倫理」に替わるものとして「弁護士職務基本規程」を会規として制定しました。
 この規程は、全13章82条で構成されています。「弁護士倫理」と比べると「刑事弁護における規律」「組織内弁護士に関する規律」「共同事務所における規律」「弁護士法人における規律」に関する章が新設されており、また「弁護士倫理」の全ての条文につき検討が加えられ必要な修正等がなされています。また、この規程の解釈適用指針を示す条項が設けられました(82条)。
司法改革の進展に伴い、弁護士を取り巻く環境は大きく変化しており、弁護士の職務は、広範な分野に広がり、職務の形態も多様化しています。そして、弁護士が社会の様々な分野へ進出して「法の支配」の理念を実践していくことが求めらる中、弁護士の倫理的基盤を確立すると共に職務上の行為規範を整備することがますます必要となってきました。「弁護士職務基本規程」を制定したのは、こういった理由によります。
 なお、この規程は、平成17年4月1日から施行されました。また、これに伴い「弁護士倫理」は、同日に廃止されました。」

(2)規律される行為の一例
ア 事件記録の保管等

 第18条「弁護士は、事件記録を保管又は廃棄するに際しては、秘密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなければならない。」

イ 事務職員等の指導監督

 第19条「弁護士は、事務職員、司法修習生その他の自らの職務に関与させた者が、その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に及び、又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければならない。」

ウ 秘密の保持

 第23条「弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない。」(刑法134条・秘密漏示罪では6月以下の懲役又は10万円以下の罰金)

エ 預り金の保管

 第38条「弁護士は、事件に関して依頼者、相手方その他利害関係人から金員を預かったときは、自己の金員と区別し、預り金であることを明確にする方法で保管し、その状況を記録しなければならない。」

オ 預り品の保管

 第39条「弁護士は、事件に関して依頼者、相手方その他利害関係人から書類その他の物品を預かったときは、善良な管理者の注意をもって保管しなければならない。」

カ 預り金等の返還

 第45条「弁護士は、委任の終了に当たり、委任契約に従い、金銭を清算した上、預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければならない。」

キ 国選弁護における対価受領

 第49条「弁護士は、国選弁護人に選任された事件について、名目のいかんを問わず、被告人その他の関係者から報酬その他の対価を受領してはならない。」

ク 相手方からの利益の供与

 第53条「弁護士は、受任している事件に関し、相手方から利益の供与若しくは供応を受け、又はこれを要求し、若しくは約束をしてはならない。」(弁護士法76条により違反行為に対しては3年以下の懲役)

7 懲戒制度

(1)意義

・弁護士の登録を日弁連、弁護士会が行うこととともに、弁護士自治の大きな柱。
・弁護士について懲戒の事由があると思料する者は誰でも、その弁護士が所属する弁護士会に対して懲戒請求をすることができる。
・懲戒事由…弁護士法、所属弁護士会または日弁連の会則に違反したとき、所属弁護士会の秩序または信用を害したとき、その他職務の内外を問わず品位を失うべき非行があったとき(弁護士法56条)。
・懲戒処分に該当するとされた例…会費の滞納、預り金員の横領、委任事務処理の懈怠、委任事務処理経過と結果の報告懈怠、上訴期間等の期間徒過、非弁護士との提携、職務を行い得ない事件違反等。
・機関雑誌「自由と正義」に弁護士会の懲戒処分の理由の要旨が公告される。戒告の処分を除いて、弁護士会は裁判所、検察庁に通知しなければならない。

(2)懲戒処分の種類
ア 戒告

・非行の責任を認めさせて反省を求め、再び過ちを犯さないように戒める処分。
・弁護士の身分や資格に影響は及ばず、職務活動に制限はなされない。

イ 業務停止

・一定期間弁護士の職務行為を行ってはならない旨を命ずる処分。
・弁護士の身分や資格に変更をもたらすものではない。

ウ 退会命令

・所属弁護士会から一方的に退会させる処分。
・告知と同時に弁護士の身分を失う。弁護士資格は喪失しないが、別の弁護士会に入会を希望して登録請求をしようとしても、まず認められない。

エ 除名

・弁護士の身分を一方的に剥奪する処分。
・告知の日から3年間、弁護士の資格を失う。

8 非弁護士の取締り

(1)弁護士法の規定
第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

 弁護士でない者が、報酬を得る目的で、一般の法律事件に関して法律事務を取り扱うこと、またはこれらの法律事務の周旋を行うことを、それぞれ業とすることを禁止(違反行為に対しては2年以下の懲役または300万円以下の罰金)。

第73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)

 何人であっても、他人の権利を譲り受けて、訴訟等の手段によってその権利を実行することを業とすることを禁止(前条と同じ罰則がある)。

第74条(非弁護士の虚偽標示等の禁止)

 弁護士でない者が、弁護士または法律事務所の標示等をすることと、利益を得る目的で法律相談その他法律事務を取り扱う旨の標示等をすることを禁止(違反行為に対しては100万円以下の罰金)。

第27条(非弁護士との提携の禁止)

 弁護士が、72条から74条に違反する者から事件の周旋を受け、またはこれらの者に自己の名義を利用させることを禁止(非弁提携の禁止、違反行為に対しては72条と同じ罰則)。

(2)意義

・72条の立法趣旨…「弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、広く法律事務を取り扱うことをその職務とするものであって、そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされているのであるが、世上には、このような資格もなく、なんらの規律に服しない者が、自らの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とする例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人の利益をそこね、法律生活の公正円滑な営みを妨げ、ひいては法律秩序を害することとなるので、本条は、かかる行為を禁圧するために設けられたもの」(最高裁昭和46年7月14日大法廷判決)。
・これらの規定により、弁護士のみが一般の法律事件に関する法律事務の取扱ができることになり、「法律事務独占」の根拠規定と位置づけられる。 

9 弁護士と事務職員

(1)弁護士の仕事の多様性
ア 法律事務の処理

・裁判所での活動…民事・刑事・行政・非訟・調停・保全・執行等
・裁判所外での活動…仲裁・審査・不服申立.法律相談・示談交渉・契約締結等

イ 弁護士会関係の活動

・弁護士会の会務(役員・委員会活動)
・法律扶助協会・弁護士協同組合の組織活動

ウ 官公庁からの委託に基づく職務(調停委員・審議会委員など)
エ 各種任意団体の活動
(2)弁護士の仕事の特殊性
ア 法曹の一員

 基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、進んだ弁護士自治権を付与されており、法律事務を独占している。

イ 対人援助業

 その中でもプロフェッションと呼ばれる仕事。依頼者の高度な秘密を取り扱うため、重い守秘義務を課せられている。

ウ 独立経営者

 医師のように医療保険制度はなく、監督官庁からの補助金もない。事務所経費、自身の収入は顧客等から得る売上でまかなうしかない。 

(3)弁護士と事務職員の関係
ア 事務職員の位置づけ

 第13回弁護士業務改革シンポジウム第1分科会「事務職員との協働による業務革命-多様化する法律事務所の新たな展開」(平成15年11月14日、鹿児島)
 司法改革の大きなうねりのなかで、「市民にとって身近な法的サービスを真に充実させることは、決して弁護士だけの力でできるものではなく、弁護士と事務職員が一体となった協働体勢(チームワーク)によって初めて可能になる」として、弁護士と事務職員の協働の目的が市民のための法的サービスの質的向上にあることを明確にした。そのうえで、「協働」を担う事務職員を「単なる弁護士の手足ではなく、頼りがいのあるパートナー」として位置付けた。

イ 事務職員に求められるもの

・手続作業に精通し、依頼者とのパイプ役を果たせる質の高い事務職員。
・裁判所には書記官、検察庁には検察事務官がおり、高度な手続作業を行っている。法律事務所にも弁護士の判断をスムーズに実践するために弁護士よりも手続作業に精通し、訓練されている事務職員が必要。
・依頼者は弁護士に言いづらいことも事務職員には率直に打ち明けるなど、事務職員は弁護士と依頼者との重要なパイプ役を務めている。

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