私のヤミ金対処法4パターン


 多重債務事件の一種として、「ヤミ金融」事案がある。
 かつては10日で1割の利息を取るということから「トイチ」といわれていたこともあったが、今では1週間で3割、5割、10割といった法外な金利を取る業者が多い。
 もっとも、数年前にいわゆる「ヤミ金対策法」が施行され、一時と比べるとこの手の相談、依頼は激減している。

ヤミ金対策法の施行でヤミ金の相談が激減

 いわゆる「出資法」により、年間29.2%を超える利息を取ることは原則として刑罰で禁止されており、「ヤミ金融」業者は全て犯罪者である。このような事案で未返済分の金を業者に返すということは、犯罪者に対して弁護士が元本保証をしてあげることになり、ヤミ金業者を助長することにつながる。
 そこで、私を含めて多くの弁護士は、民法708条の「不法原因給付」を理由として、今後は一切の返済をしないことをヤミ金に通告する(弁護士によっては、ヤミ金に払った金を全て取り戻すという方針で取り組んでいる人もいるが、私は原則としてそこまではやっていない。甘いのかもしれないが…)。

相談を受けたら弁護士がその場で電話

 ヤミ金案件を受任すると、私はその場で依頼者に全てのヤミ金へ電話してもらうことにしている。
 「○○ですけど、今、弁護士に依頼をしたので、代わります。」と直接に話してもらい、ヤミ金が「そんな名前の債務者は知らない」と弁解できないようにした上で、私が代わる。
 「弁護士の石井です。今、この人の債務整理(or自己破産)の依頼を受けました。そちらに受任通知をお送りしたいのですが、住所かFAX番号を教えてもらえますか?」
 ここから先のやりとりには、いくつかのパターンがある。

パターン1(通常型)

ヤ「お金返してもらえるの?」
弁「○○さんから聞いているところでは、そちらはいわゆる『ヤミ金』さんとのことなので、不法原因給付にあたるので、お返ししないことになります」
ヤ「じゃあ、うちは債務不存在ってことでいいから。受任通知もいらないよ」
弁「もう○○さんに連絡しないでくださいね」

 既にヤミ金にそれなりの金利を払っている場合には、ヤミ金側も弁護士から本格的に刑事告訴等をされることを嫌って、あっさり引き下がるのがほとんどである。
 このような事案で、ヤミ金に払い過ぎの額が明確に分かっている場合には、連絡先を聞き出した上で過払い金の返還を要求することもある。

パターン2(1回も返済していない型)

ヤ「この人1回も払ってもらってないよ。完全な詐欺じゃねーか」
弁「おたくはヤミ金さんなので、支払うことはできません。詐欺だというならどうぞ警察に訴えてください。その代わりこちらもおたくを告訴しますから」
ヤ「ヤミ金ヤミ金ていうけど、証拠でもあんのかよ」
弁「依頼者が言っていること自体も立派な証拠になります」
ヤ「お前は詐欺師の片棒をかつぐ弁護士かよ」
弁「依頼者の言うことを信じて行動することが弁護士の義務ですから」
ヤ「うちはちゃんと法定利息内でやってんだよ。他のヤミ金と一緒にするな」
弁「3万円のお金を年29%で貸したとして、1か月にいくらの利息になるか分かりますか」
ヤ「……(実際には法定利息では貸しているわけがないので即答できない)」
弁「月に725円です。毎月それだけの利息を取るために大の大人がビジネスとして貸金業をやるわけないでしょう。ヤミ金さんなりの利息をとるからビジネスとして成り立つんですよ。おたくが法定利息内でやっているなんて誰も信じませんよ。」
ヤ「借りた金を返すことぐらい、人間として当たり前だろ。返せ」
弁「どうしても返してほしければ、どうぞ裁判を起こしてください。裁判所が払えと命じるならば、支払うことも検討します。そのかわり、裁判では徹底的に争いますよ。」
ヤ「裁判なんて面倒くさいことやるわけないだろ!とにかく返せ!」
弁「絶対に返さないとは言っていません。裁判所が命じれば払うと言っています」
ヤ「とにかく、うちは絶対にあきらめないぞ。○○に追い込みかけてやる」
弁「本当に取立てに来たら、直ちに警察を呼ぶように○○さんに指導しています。『帰ってくれ』と言うのに帰らなければ刑法上の不退去罪になりますから」

 ヤミ金から借りたばかりで一度も返していない場合には、たいていのヤミ金さんはお怒りになるが、それはそれでやむを得ないところであろう。
 このようなやりとりをした後にヤミ金が依頼者の自宅に押しかけてきたことはほとんどない(希にはあるが、そのような場合には指導したとおりに対処してもらうしかない。ヤミ金から借りてしまった以上、本人が覚悟も持つことは不可欠であると思う)。

パターン3(しつこい型)

(パターン2のような一通りの説明をしても引き下がらないヤミ金の場合)
ヤ「おう、弁護士、お前、何年目だよ」
弁「答える必要があることだけ答えます。必要のないことには答えません」
ヤ「お前、アカか(なぜかヤミ金は「アカ」という言葉が好きなようである)」
弁「…(インターネットでニュースを見ている)」
ヤ「アカの片棒かついで、楽しいのかよ」
弁「…(ネット閲覧中)」
ヤ「オイ、聞いてんのかよ!」
弁「聞いてますよ。答える必要のないことには答えないと言いましたよ(ネット閲覧中)」
ヤ「ふざけんな!お前、アタマ悪いんじゃないの!この弁護士!」
弁「…(次のニュースをクリック)」
ヤ「オーイ、なんか答えろよ!」
弁「…(ニュース閲覧中)」
ヤ「金返せって言ってんだよ。分かんねーのか!」
弁「さっき説明しましたので繰り返しません。」
ヤ「アカの片棒かついでんじゃねーよ!」
弁「…(ネット中)」
ヤ「ガチャン(電話を叩き切る音)」

 私は、以前はこの手の相手の場合、こちらから一方的に電話を切ってしまうという対処をしていた。
 しかし、相手によっては何度もしつこくかけてくることがあり、ある時から上記のような「だんまり作戦」に切り替えたところ、効果てきめんであり、こちらも精神的に楽なので、このような対処をすることが多くなった。
 「こいつとは話しても無駄だ」と相手に思わせることは、一般の方がいろいろな局面で使える手段である。

パターン4(人情型)

(一通りパターン2のような説明をした後)
ヤ「しょうがないですね。分かりましたよ。だけど、この○○さん、うちはもう貸さないって何度も言ったのに、どうしてもって泣きついてきたんで、今回だけ助けてあげるつもりで貸したんですよ。そのことは先生も分かってくださいよ」
弁「なるほど。そうだったのかもしれませんね。だけど、だからといってヤミ金さんに返すってことにはなりませんよ」
ヤ「いいですよ。○○さんには、もう借りるなってよく言っておいてくださいよ」
弁「はい。ちゃんと伝えますよ」
ヤ「それにしても、うちみたいな短期から借りて、すぐに弁護士の所に行く人って、結構多いんですかね」
弁 「そういう人は少ないと思いますよ。たいていの人は、何とか自分でヤミ金に返してしまいたいと思うもので、それで自転車操業をしているうちに件数がふくれあがってどうしようもなくなって、初めて弁護士の所に相談に来るんですよ。弁護士も一般の人にとっては敷居が高いみたいで、なかなか相談しようと思わないようですよ」
ヤ「東京あたりの弁護士だと、悪徳弁護士も多いみたいじゃないですか」
弁「確かにそういうのもいるけど、たいていは普通ですよ。私みたいに。」
ヤ「いやー、先生みたいに自分の話を聞いてくれる弁護士はあんまりいませんよ。こっちも気持ちがすっきりしましたよ」
弁「どういたしまして」

 こういう「話の分かる」ヤミ金と話をしていると、こちらもなんだか楽しくなってくる。
 ちなみに、多くのヤミ金事案を受けてきたが、事務所に寿司やピザが大量に送りつけられるといった被害にあったことは、今まで一度もない。

ご相談はお気軽に 045-840-2444
顧問契約のご案内 中小企業のニーズに応える様々な提案をいたします
当事務所の最新トピックス・解決事例は、下記をご覧下さい。
主な取り扱い分野