遺産相続トラブルその前に!~父の死後に戸籍確認で別子の存在が発覚~

あなたは大丈夫?見知らぬ相続人

相続に関し、次のようなトラブルのご相談を受けることがあります。

「先日父が亡くなりました。私は一人っ子なので、父の遺産についてはすべて母の名前にしておいて、母が亡くなったときに私が相続すれば良いと思っていました。
ところが、戸籍を確認したところ、父には先妻がいて、その先妻はすでに亡くなっていましたが、その先妻との間に子どもがいることがわかりました。私も母も父に離婚歴があって、まして先妻との間に子どもがいるなんて全く知りませんでした。
相続放棄してもらおうと思ってその方に連絡したのですが、応じてくれませんでした。父の遺産を全く知らない人にとられるなんて納得できません。」

確かに「納得できない」お気持ちは分かりますが、法律では、先妻との間の子も相続人となり、相続分は、母:2分の1、私:4分の1、先妻の子:4分の1となります。
このような場合、感情的対立が激しくなることが多いため、先妻の子との間で父の遺産分割をめぐり、どろ沼の紛争となることも珍しくありません。当事者だけの話し合いでは解決せず、遺産分割調停、遺産分割審判といった法的手続を採ることになり、解決までに数年間を費やすということもあるのです。
また、父の遺産が預貯金等だけで、比較的分割しやすいものであれば良いのですが、不動産があるとさらに厄介です。母と私が父名義の自宅に住んでいて、母と私がこの自宅を取得したい場合、自宅の評価額の4分の1に相当する金額を先妻の子に払わなければならないといった事態に至ります。それこそ、私と母は「納得できない」でしょう。

この事例から学ぶ、相続トラブル予防のための事前準備

(1) 相続人の範囲をはっきりさせる

未然にこのような相続トラブルを回避するためには、父の生前において他に相続人となる者がいるのかどうかを、まずははっきりさせておかなければなりません。父に直接確認することができればよいですが、難しければ戸籍を取り寄せることで明らかになります。その場合、今現在の戸籍を取り寄せただけでは分からないことが多いので、父が生まれた時まで遡って取る必要があります。
できれば、父が、ご自分が亡くなった後で子ども達が相続トラブルを抱えることを避けたいのであれば、亡くなる前に他の子どもの存在などはきちんと話しておくべきでしょう。

(2) 生前に遺言を書いてもらう

他に相続人となるものがいると分かった場合、未然に相続トラブルを避けるには、父に遺言を書いてもらうことが有効です。母と私に「遺産の全部を相続させる」との遺言を残してもらうのです。
もっとも、このような遺言があっても、先妻の子が遺留分を主張すると、すべての遺産を母と私で取得することはできません。ただ、先妻の子の取り分(遺留分)は8分の1に減るので、母と私は、父からの相続分を多く確保できるようになります。(遺留分の制度については、・・・を参照下さい)
しかし、その遺留分をめぐって結局先妻の子と紛争になってしまうこともあります。

そこで、遺言には遺留分に相当する財産については「先妻の子に相続させる、その他の財産は全部母と私に相続させる」と記載してもらいます。このようにすれば、遺言のとおりに遺産分割を行えば足り、遺留分をめぐる紛争も回避できます。

(3)「遺留分相当額の財産を譲渡する」という選択肢

父の生前に遺留分相当額の財産を父から先妻の子に贈与しておいてもらい、遺言としては、「全財産を母と私に相続させる」と書いてもらうことでも良いです。
この場合、生前に贈与を受けているので、先妻の子には遺留分が発生しなくなり、相続時の財産を全部母と私で相続できるので、紛争を回避できます。
また、父に「全財産を母と私に相続させる」との遺言を書いてもらい、先妻の子に、遺留分放棄をしてもらうことも方法の一つです。
この遺留分の放棄は父の生前にできますが、家庭裁判所に申し出て、その許可をもらうことが必要です。先妻の子に遺留分を放棄してもらうので、父が亡くなった後で紛争になることはありません。
もちろん、先妻の子が遺留分放棄に応じてくれなければならないのですが、遺留分相当額まで父が贈与しなくとも、ある程度の金銭を贈与すれば、先妻の子が応じてくれるかもしれません。
なお、遺言はあくまで父の意思に基づいて、父が作成するものですので、強要はしてはいけません。

父の生前に弁護士相談がおすすめ

相続がトラブルに発展すると解決には時間がかかることが多いので、できるかぎり、父が生前のうちに弁護士に相談しておくことをお勧めいたします。
相続トラブル解決の経験が多い弁護士に相談すると、法律や判例に基づいて、さまざまな角度から適切にアドバイスをしてくれます。人生の良きパートナーとして、弁護士をご活用ください。

 

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